コンシェルジュのための美術指南 (4)

レ・クレドール・ジャパン協力企業
新・古美術 富士鳥居
代表取締役 栗原直弘

  このコラムの (2) でお話しした、美術品や古美術の三種類の「在り方」の違いは、それが同じ形、同じ用途であっても、それらを使用する目的や作家の意識によって、それぞれ違うということなのです。そして、その基となっているのは、日本には「普段着と余所行き」という文化があり、かつては装飾品や調度なども、その使用目的によって格の違いがありました。例えば、同じ硯箱でも、普段使い用の赤や黄色の漆で簡単な絵が描かれた物があれば、特別な来客の時や晴れの席にのみ飾る本金の蒔絵の硯箱があり、さらに献上品や贈答用などの特別な意味合いで、その当時の一流の作家に依頼して作らせた物もあるのです。
  戦前の日本では、普段はお蔵に入っている晴れの席用や献上品が時代を経て市場に出できたものを古美術・骨董と呼んでいました。しかし現在では、かつて消費を目的として造られた普段使いの雑器が古くなった物までもが、「アンティーク」や「生活骨董」などと呼ばれて、骨董市などに出回り、それらはエキゾティシズムも含めて、外国人にも数多く売られてきたのです。
  もちろん、皆様のお仕事柄、お泊りのお客様のニーズであれば、骨董市やボロ市などをご案内することもあるでしょうが、お客様のお尋ねに対して、ただ情報や知識だけでご案内するのと、そこに並べられている物がどのような物かを知ってご案内するのとでは意味が違うでしょう。
  言うまでもなく、すべての人が美術品の本質を理解しているわけでも、高額な古美術を購入できるわけもなく、さまざまなお客様に対応しなければならない皆様のお仕事の大変さは十分に理解しています。しかし、弊店が日本製の手造りにこだわり、真面目な古美術にこだわる理由は、弊店の商品一つひとつが日本の外交官であるという意識からなのです。
  自宅に帰って荷造りを解き、喜んで飾った物がニセモノやいい加減な物であると知れば、その旅自体を台無しにする場合もあるでしょう。これは、もちろん皆様のサービスにも言えることで、皆様のお仕事によって、この日本という美しい国と日本人の思い遣りが、いつまでもお客様の心に残るということは、下手な外交政策などよりも大きなことだと考えているのです。

投稿日: 2010年2月22日

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